教授挨拶
岡田 浩一
“小さな計画を立ててはならない。そこには人間の血をかきたてる魔力がないし、多分それ自体、周囲に認識されることがないからだ。それよりいっそ、大きな計画を立てよう。希望を掲げて頑張ろう。そして一旦記録された高貴で論理的な図式は決して消え去ることはなく、我々の死後も長くさらに強く自身を主張して生き続けるということを忘れてはならない。”

これは、19世紀末に活躍した米国の建築家 Daniel H. Burnham の言葉です。私が米国留学中にこの言葉に出会って以来、折に触れて思い起こし、自らを奮い立たせてきました。それは現状に甘んじることなく、常に前向きに自己を高め続けたいという真摯な思いを忘れないためです。

本教室は私が運営責任者を拝命してから12年目を迎え、着実に歩みを重ねてきました。しかし、理念は変わりません。それは「各自、一芸に秀でよ」ということです。大それたことである必要はありません。自ら興味を抱いたことに真剣に取り組み、納得がいくまで突き詰める――その姿勢こそが人を成長させ、心に余裕をもたらし、他者への思いやりを育みます。物事を深く追求する人には、自然と敬意が集まります。そして、そのような個々の努力が教室全体の協調を生み、組織をさらに力強く前進させる原動力になると信じています。

本教室は、組織としても「一芸に秀でる」ことを目指し、次の三つの目標を掲げています。

1)Total Nephrologyの確立

Total Nephrologyとは、リスク管理から腎疾患の専門治療、末期腎不全に至った後の腎代替療法、さらに患者の全人的ケアまでを包括する腎臓病学の概念です。「全身から腎臓を診る」「点ではなく線で患者を診る」という視点を重視し、総合内科と腎臓内科の二本立てを先取りする考え方でもあります。

2)Evidence-based medicineとNarrative-based medicineの両立

EBMに基づく標準治療はすべての医師が理解すべき基本ですが、それだけでは十分ではありません。日本の医療の強みであるきめ細かな患者観察と対話、病態生理や個性に応じた柔軟な診療に、科学的態度を加えることで、より質の高い医療が実現すると考えています

3)最新の研究成果に裏付けられた診療と臨床に立脚した基礎・臨床研究の推進

大学人として、常に最新の研究成果に関する情報を収集し、適切に評価をした上で積極的に日常診療に還元していきます。また日々の臨床経験を通して想起したclinical questionを大切にし、それを起点としたresearch questionを解明すべく基礎・臨床研究に取り組んでいきます。

12年の歩みを経て、私たちはさらに高みを目指します。ともに学び、磨きあい、そして一芸に秀でるべく挑戦し、力強い組織を築いていく――その志を共有できる仲間の参集を心から期待しています。

2026年1月1日
埼玉医科大学腎臓内科教授・運営責任者
岡田 浩一