腎臓病について
慢性腎臓病
1) 慢性腎臓病とは

腎臓病は、その名の通り、腎臓のはたらきが悪くなる病気です。腎臓は体の中の毒素や老廃物の除去、水分の調節といった、生命を維持し、身体の環境を一定に保つ大切な役割を担っており、腎臓に問題が起こると身体中にさまざまな影響がでます。
一度失われた腎臓の機能は、多くの場合は回復することがなく、慢性の腎不全となります(急性の腎臓機能障害の場合など、例外はあります)。さらに腎臓の機能が低下し腎不全が進行すると、体の中に老廃物がたまり、尿毒症の症状が現れます。たまった老廃物を取り除くためには、腹膜透析(PD)や血液透析(HD)といった透析療法、あるいは移植といった腎代替療法が必要になります。一時は「不治の病」とも呼ばれた腎臓病ですが、近年の治療技術の進歩によって、早期に治療を開始すれば、腎臓の機能の低下を防いだり、進行を遅らせたりできるようになりました。
また、透析をめぐる技術や環境も進化を続けており、透析に入る前の生活とそれほど大きな隔たりなく透析生活を過ごすことのできる治療の選択肢も増えてきました。

2) 腎臓病の治療

腎機能が低下してくると失われた腎臓の機能を補うため、透析療法もしくは腎臓移植が検討されます。透析療法には腹膜透析(PD)と血液透析(HD)の二種類があります。腹膜透析(PD)は、内臓を守る生体膜である「腹膜」を利用して、血液透析(HD)は、体外循環によって透析器(ダイアライザー)を通して血液をきれいにする方法です。
透析療法は、一生続ける必要があります。また、日常生活に深くかかわる治療ですので、二つの透析双方の利点と欠点をよく理解したうえで、患者さんの病態と生活スタイルに合った治療選択を行うことが推奨されます。

腹膜透析とは?

お腹の中に腹膜透析液を入れ、腹膜を介して水や老廃物を取り除く方法です。
お腹に植え込んだ管を使って、腹腔内へバッグに入った約2Lの腹膜透析液を入れます。約4~8時間後にこれを空のバッグに出して捨て、新しいバッグをつけ換えて、お腹の中に新しい透析液を入れます。
このような操作を1日4~5回、自分で行います。透析液の出し入れなどバッグの交換には1回に約30分かかります。

腹膜透析の種類

腹膜透析には、自分で透析液を交換するCAPDと、装置が自動的に透析液を交換するAPDがあります。体調や仕事、生活様式を考え、医師やスタッフと相談して、自分に適した方法を選びましょう。

  • CAPD(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis:連続携行式腹膜透析)

約4~8時間ごとに、バッグを交換し、24時間連続して透析を行います。

  • APD(Automated Peritoneal Dialysis:自動腹膜透析)

寝ている間に装置が自動的に何回か透析液の出し入れを行います。
夜間だけでは不足になる場合、昼間に追加する方法もあります。

  • その他、 腹膜透析と血液透析を併用する方法もあります。

担当医と相談し、体調や仕事、生活様式を考慮して、自分に最も適した方法を選びましょう。

血液透析とは?

人工腎臓を用いて、血液を体外に引き出し、これを浄化する部分である透析器(ダイアライザー)に誘導し、老廃物を取り除き、浄化した後に再び体に戻す操作を連続して行います。
この治療を続けるために、透析施設へ週3回程度通院します。1回の透析には4~5時間が必要です。また、家族などの協力を得て、自宅で血液透析療法を行うことも可能です。

腎臓は24時間フルに働いていますが透析では時間も効率も限られており、腎臓の働きを十分に代行することはできません。したがって、食事や運動など日常の生活にも工夫が必要です。

シャントとは?

血液透析は、血管に針を刺して血液を連続的に透析装置とダイアライザーへ取り出す必要があるため、簡単な手術により、一般に利き腕ではない方の前腕の動脈と静脈を皮下でつなぎ合わせて、シャントと呼ばれる血液の取り出し口を作ります。
手術によりシャントを作ると、動脈から静脈に大量の血液が流れて、皮下にある静脈が一部膨らんできます。透析を行う時は、太くなった皮下の静脈に針を刺して血液回路と接続して透析治療を行います。
シャントは透析患者さんの命綱でもあり、とても大切なものです。

腎移植とは?

透析療法より体調がよく、また生活上の制約が少ない点で優れています。
移植後は、体の爽快感や味覚障害の改善などが、生活の質を向上させます。順調であれば普通の人と同じ生活ができます。
月1~2回ほど免疫抑制剤などの薬をもらったり、検査を受けるために病院に通う必要があります。
移植された腎臓が機能する率を生着率といいますが、移植後5年の生着率は生体腎移植 で約80%、献腎移植で約70%となっています。

  • 生体腎移植

親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者などのドナー(腎臓を提供する人)から腎臓を1個取り出し てレシピエント(移植を受ける人)に移植します。

  • 献腎移植

脳死者、あるいは心停止直後の死者から腎臓を移植します。
献腎臓移植 を受けるには、事前に日本臓器移植ネットワークに献腎臓移植 希望の登録をしておく必要があります。わが国では、献腎臓移植 希望者に比べて死体腎の提供数が少ないことから、登録したからといってすぐに移植を受けられるわけではありません(献腎臓移植 の登録者12000人のうち、実際に移植を受けた方は200名ほどです)。