腎臓のなかには糸球体という血液を濾過する装置があります。糸球体は左右の腎臓にそれぞれ100万個ずつあるといわれ、血液を濾過し最初の尿である原尿を作り出します。その後原尿は尿細管という管を通り必要な物質と不要な物質のやり取りが行われ最終的に我々が排泄する尿となります。この原尿を作り出す濾過装置に炎症がおこる病気を糸球体腎炎といいます。
糸球体腎炎の原因はほとんどが不明であり、その場合は原発性糸球体腎炎といいます。ほかの疾患や薬剤などで発症することもありその場合は続発性(二次性)糸球体腎炎といいます。続発性の原因はさまざまであり、膠原病、悪性腫瘍、感染症、薬剤などが代表的なものです。
糸球体腎炎の症状は血尿と蛋白尿ですが病気によりその程度はさまざまです。症状として血尿が強くでるタイプの糸球体腎炎と蛋白尿が強く出るタイプの糸球体腎炎がありその程度と腎機能障害の進行速度から以下の4つに分類されます。
① 急性糸球体腎炎:血尿と尿量低下があり数日で急速に腎機能障害を呈する。
② 急速進行性糸球体腎炎:血尿、蛋白尿があり数週で腎機能障害を呈する。
③ 慢性糸球体腎炎:血尿、蛋白尿があり数年かけて腎機能障害を呈する。
④ ネフローゼ症候群:高度の蛋白尿があり、血液中の蛋白が低下し全身に浮腫を呈する。
- このほかに無症候性血尿/蛋白尿というものがありますが、これのおおくは慢性糸球体腎炎の初期である場合と良性疾患(家族性蛋白尿、起立性蛋白尿)などがあります。
糸球体腎炎の診断は腎生検という腎臓の組織の一部を採取して行う検査で行いますが、腎生検のみでは判断が困難なことが多く患者様の経過や血液検査などを含めて総合的に診断を下します。
腎疾患の治療はどのような場合も減塩、蛋白制限食などの食事療法から始まります。糸球体腎炎の場合も軽症の場合は食事療法、血圧管理などになりますが、重症になってくると副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)や免疫抑制剤を用いた治療を行います。ステロイドや免疫抑制剤は副作用も多く、ガイドライン通りの治療ができない方もいらっしゃいます。年齢や合併症、生活背景などのさまざまな因子を踏まえたうえで、将来的なメリットとデメリットを考慮して治療を行っていきます。